- FREE
ネット上で出物があったら即座にクリックするワインがある。筆頭はトリンバックのクロ・サンテューヌだ。高価な上に、大半がレストランに直行する。小売りでは見かけない。あっても若いヴィンテージばかり。熟成したものは黄金の価値がある。
開けたのは1997年。数年前にニューヨークの小売店で120ドルだった。何本か購入。そろそろ飲み頃かと期待して、六本木の高級居酒屋に持参した。1年以上のご無沙汰である。ミシュランガイドの発表翌日。1つ星を維持。いつのまにか結婚していた店主の小林さんは絶好調だった。
のっけから、せこがに、アンキモ、イクラで飛ばし、北海道産の白子。これが素晴らしくトリンバックと相乗した。白子は上品で、ねっとりとしていて、海の滋養が凝縮されている。母なる海とディープキッスしているようだ。妖艶にして、奥行きが深い。
クロ・サンテューヌは最初はシャイだった。15分もたつと、本来の姿を表わす。シャブリのグランクリュに負けないミネラル感。果実の純粋さ。酸は丸くなっていて親しみやすい。パイナップルやマンゴなどのトロピカル果実が香り、ハチミツの舌触りがとろける。残糖はリットル当たり1・9グラム。辛口だが、魂がとろけるほど官能的。発展のドラマが1時間ほどめまぐるしく続いた。やはりこれはフランスを代表する白ワインにふさわしい。モンラッシェかこのワインがあれば、白ワインはそれでいい。
トリンバックは辛口にこだわっている。クロ・サンテューヌは1・67ヘクタールの畑から8000本のみ生産。12代目のジャン・トリンバックは「リースリングが白桃とすれば、ピノ・グリは黄桃」と話していたが、高貴な白桃ほど日本人の心に訴えるものはない。いや、世界中の白ワインファンにもアピールしている。
だから、クロ・サンチューヌはアルザスのロマネ・コンティと呼ばれる。ロマネ・コンティという形容詞がつくワインの多くはまやかしだが、これだけは本物だ。和食に合わせる白ワインとしては、最高に贅沢な組み合わせと確信した。
次々と魚料理が出てくる。アナゴのお椀に真鯛。ワインは姿を変えて、終盤になるとまた控えめになった。閉じ気味になったのだ。ポテンシャルの強さゆえか。数年もおけば、重油香がもっと強くなって、別の表情を見せるのだろう。フルーツをかすかに残した今の段階が最良のタイミングだった。とはいえ、白ワインだけでは飽きてしまう。次なるボトルを開けた。
(2013年12月 東京・六本木の「青華こばやし」で)
トリンバック リースリング クロ・サンテューヌ 1997
購入:NYのショップで120ドル
死ぬまでにもう一度飲みたい度:95点
開けたのは1997年。数年前にニューヨークの小売店で120ドルだった。何本か購入。そろそろ飲み頃かと期待して、六本木の高級居酒屋に持参した。1年以上のご無沙汰である。ミシュランガイドの発表翌日。1つ星を維持。いつのまにか結婚していた店主の小林さんは絶好調だった。
のっけから、せこがに、アンキモ、イクラで飛ばし、北海道産の白子。これが素晴らしくトリンバックと相乗した。白子は上品で、ねっとりとしていて、海の滋養が凝縮されている。母なる海とディープキッスしているようだ。妖艶にして、奥行きが深い。
クロ・サンテューヌは最初はシャイだった。15分もたつと、本来の姿を表わす。シャブリのグランクリュに負けないミネラル感。果実の純粋さ。酸は丸くなっていて親しみやすい。パイナップルやマンゴなどのトロピカル果実が香り、ハチミツの舌触りがとろける。残糖はリットル当たり1・9グラム。辛口だが、魂がとろけるほど官能的。発展のドラマが1時間ほどめまぐるしく続いた。やはりこれはフランスを代表する白ワインにふさわしい。モンラッシェかこのワインがあれば、白ワインはそれでいい。
トリンバックは辛口にこだわっている。クロ・サンテューヌは1・67ヘクタールの畑から8000本のみ生産。12代目のジャン・トリンバックは「リースリングが白桃とすれば、ピノ・グリは黄桃」と話していたが、高貴な白桃ほど日本人の心に訴えるものはない。いや、世界中の白ワインファンにもアピールしている。
だから、クロ・サンチューヌはアルザスのロマネ・コンティと呼ばれる。ロマネ・コンティという形容詞がつくワインの多くはまやかしだが、これだけは本物だ。和食に合わせる白ワインとしては、最高に贅沢な組み合わせと確信した。
次々と魚料理が出てくる。アナゴのお椀に真鯛。ワインは姿を変えて、終盤になるとまた控えめになった。閉じ気味になったのだ。ポテンシャルの強さゆえか。数年もおけば、重油香がもっと強くなって、別の表情を見せるのだろう。フルーツをかすかに残した今の段階が最良のタイミングだった。とはいえ、白ワインだけでは飽きてしまう。次なるボトルを開けた。
(2013年12月 東京・六本木の「青華こばやし」で)
トリンバック リースリング クロ・サンテューヌ 1997
購入:NYのショップで120ドル
死ぬまでにもう一度飲みたい度:95点
購読申込のご案内はこちら
会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!