黎明期オレゴン、新旧世界の交差点に立つアデルスハイム

　オレゴンとカリフォルニア。どちらがブルゴーニュ品種に適しているかは、簡単に答えが出ない。カリフォルニアの生産者は、余裕があるのか、多くを語らないが、オレゴンの生産者は「オレゴンはカリフォルニアより涼しい」と強調する。

　結論はひとまず置いて、古いオレゴンのピノ・ノワールは面白い。ブルゴーニュとのつながりを感じさせるからだ。一つには味わい、一つには歴史が。1971年に設立されたアデルハイム・ヴィンヤードは、間違いなくパイオニアの1人。デヴィッド・アデルスハイムは、オレゴン・ワインボードの初代会長を務めた。オレゴンのピノ・ノワールを有名にしたジョゼフ・ドルーアンとの関係も深い。

　ドルーアンの現在の醸造責任者を務めるヴェロニク・ドルーアンは一族の中で、初めて大学で醸造学を学んだ造り手だが、実地の研修をしたのはオレゴンだった。父ロベールが偉かった。いずれ家を継ぐのだから、外部で苦労させようとしたのだろう。

　ヴェロニクは1986年に、アデルスハイム、アイリー、ベゼル・ハイツで研修した。デヴィッドは、アイリー近くのダンディ・ヒルズの畑の出物をジョゼフに紹介し、ドメーヌ・ドルーアン・オレゴン（DDO）が87年に設立された。オレゴンのピノ・ノワールを世界地図に載せるのに、自作のワインと、ドルーアンへの助力の両面で支えたのだ。新旧世界の交差点のど真ん中に立っていた。

　そんな歴史を考えながら、94年のポルク・カウンティのセブン・スプリングス・ヴィンヤードを飲んだ。リフォルニアの古いピノよりはるかに、ブルゴーニュに近い。アルコール度は13％。ブルゴーニュの1969年のように熟したニュアンスがある。クレーム・ブリュレの焦がした香り、炭や焼き栗の香り。樹齢は若いはずだが、湿った腐葉土の複雑な香りは、コート・ド・ボーヌの頑強なブルゴーニュと間違えてもおかしくない。

　デヴィッドはボーヌ醸造学校で短期間学んで、ポートランドでソムリエをしただけで、正式な教育を受けていない。専門教育を受けたワインメーカーのドン・カルツナーはいたが、統合的に指揮していたわけではないだろう。

　にもかかわらず、きれいに熟成している。オレゴンには当時からポテンシャルがあったということだろう。

（2013年11月　自宅で）
アデルスハイム・ヴィンヤード　ポルク・カウンティ　セブン・スプリングス・ヴィンヤード　1994
購入：米西海岸のショップで　40ドル
年に一度は飲みたい度：87点