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寸止めの美学、ヴー・ヴ・クリコ・ロゼ1985

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 シャンパーニュは量と質の両立が難しい。

 量を増やすと、均一性は失われるが、一定量がないとノンヴィンテージの質は保てない。質を追求しようとしたら、豊富なリザーヴワインは欠かせない。資金力を保つには量がいる。最後はどうバランスをとるかだ。

 LVMHグループ傘下で、量を追求せずに成功しているのはクリュッグだけ。ヴーヴ・クリコはかなりの量を生産するメゾンだが、高い品質を保っている。先代醸造責任者のジャック・ペテルスと、現在のドミニク・ドゥマルヴィルの引継ぎがうまくいっている。

 印象的なクリコ・イエローのプロモーションなど、シャンパーニュらしいプロモーションはうまいが、品質を犠牲にしていない。先日、古いヴィンテージを味わって再認識した。うれしくなって、1985のロゼ・レア・ヴィンテージを開けた。先日のカリフォルニア旅行で購入し、持ち帰ったボトルだ。

 85ロゼはメゾンやレストランなど、何度か飲んでいるが、一貫性がある。赤胴色を帯びたピンク。重心が低くて、ブルーベリーのコンフィ、なめし革、熟成したチーズの香り。泡は細かく溶け込んでいるが、舌の上でチリチリと主張する。圧倒されるわけではないが、ヴーヴ・クリコらしい品の良さがある。85はピノ・ノワールもシャルドネも成功したヴィンテージだ。

 一言でいえば、バランスが良いのだが、それだけで片付けたくない品格がある。ペテルスはある意味、保守的だ。ステンレスタンクにこだわり、主張の強すぎる味わいを嫌った。押し出しが弱いと感じる人間もいるかもしれないが、この寸止めの美学こそが大メゾンに求められるものだ。

 ペテルスのこんな言葉を覚えている。

 「ラ・グランダム・ロゼの品質はブジーのピノ・ノワールにかかっている。ブジーのピノから少量生産で特別なキュヴェを造ろうと思えばできる。それはしない。我々のメゾンの役割と違うから」

 つまり、クロ・デュ・メニルやクロ・ダンボネイを造ろうと思えばできるが、あえてしないということなのだ。

 3つ星シェフが20人の客を相手に特別な料理を出すか。それとも、各国に何軒も展開して喜びを広げるか。その違いだと思う。

 秋のロゼ・シャンパーニュはオイシイ。そして美しい。これには松茸と牛肉がふさわしい。飛行機で運んだ甲斐があった。

(2013年11月 ワイン会で)
シャンパーニュ ヴー・ヴ・クリコ ロゼ レア・ヴィンテージ 1985
購入先:米西海岸のショップ 150ドル
死ぬまでにもう一度は飲みたい度:92点

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