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過小評価されるグリューナー・ヴェルトリーナー  オーストリアのMW迎えて代表的なエントリーレベルをきわめる

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 オーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーは、もっと日本で注目されるべき白ブドウだ。フレッシュで、ピュアな果実と香り高さ、ドイツのリースリングより高い糖度を備えている。ミネラル感に支えられた透明感があり、世界で最も和食にあわせやすい白ワインの一つといっていい。
 オーストリアはセントラル・ヨーロッパの産地として評価は確立されている。英米の有名な評論家や雑誌はヴィンテージが変わるたびに、産地を訪問して評価を発表する。栽培面積はブルゴーニュより少し広い4万5000ヘクタール。1万4100のワイナリーがあり、1軒当たりの生産量は多くない。75%が白ワインで、作付け面積全体の30%以上がグリューナー・ヴェルトリーナーとなっている。
 産地はヴァインラント・エスタライヒ、シュタイヤーラント、ウィーンの3地方に分かれる。この3地方が、ニーダーエスタライヒ州、ブルゲンラント州、ウィーン州、シュタイヤーマーク州など9つの包括的生産地域に分けられ、さらにヴァッハウ、クレムスタールDACなど16の限定的生産地域に細分化されている。

3つの気候と複雑な土壌から生まれる多彩な個性

 気候は全体的に寒暖差の大きい大陸性気候だが、3つに大別される。東部はチェコからの涼しい北風の影響を受け、中央部は東側に接するスロバキアやハンガリーの影響を受ける温暖なパノニア気候、南部は地中海性気候の影響を受ける。土壌は石灰岩を含むシルト状のレス、ローム、泥灰岩、石灰岩、小石、砂など多彩で、産地で異なる多様な個性を生んでいる。
 グリューナー・ヴェルトリーナーを考える時、最も重要なのは東北部にあるニーダーエスタライヒ州である。ドナウ川が東西に流れ、チェコ、スロバキア、ハンガリーと国境を接している。生産地域面積は約2万6800ヘクタールと、国全体の6割を占め、8つの限定的生産地域に分かれる。オーストリア最大のクヴァリテーツヴァイン(上質ワイン)の産地であり、全体のほぼ半分でグリューナー・ヴェルトリーナーが栽培される。ヴァインフィアテル、ヴァッハウ、カンプタール、クレムスタール、ヴァーグラムなど有名産地が多く含まれる。州の中でも最北部のヴァインフィアテルはきわめて冷涼で、南部のテルメンレギオンはパノニア気候の影響を受けて温暖である。ドナウ渓谷沿いに広がるヴァッハウも、立地によって気候が異なる。どの産地も複雑な気候が入り混じり、簡単には割り切れない多様性を備えている。
 オーストリアは2002年から、フランスのAOCやイタリアのDOCと同様の産地呼称統制を採用した。これは「Districtus Austriae Controllatus」の略称で、産地の個性を表現する品種とスタイルが求められる。DACを名乗れる限定的生産地域は、クレムスタール、カンプタール、トライゼンタール、ヴァインフィアテル、ノイジードラーゼー、ライタベルク、ミッテルブルゲンラント、アイゼンベルク、ヴィーナー・ゲミシュター・サッツがある。
 一方、名高いヴァッハウでは、ワイン法とは別に、生産者の協会が毎年、試飲をして格付けを行っている。糖度の基準によって、シュタインフェーダー、フェーダーシュピール、スマラクトの3段階に分けられる。シュタインフェーダーはクヴァリテーツヴァインに相当し、フェーダーシュピールはカビネット相当、スマラクトはアルコール度が12.5度以上のシュペトレーゼ級となっている。

傑出は3生産者 クノール、プラーガー、ブリュンデルマイヤー

 今回の試飲は、オーストリアから来日したアンドレアス・ウィックホフMWとともに、レギュラーの山本昭彦、大橋健一MW、大越基裕を含めた4人で行った。ウィックホフMWはカンプタールを代表するブリュンデルマイヤーのジェネラル・マネジャーを務め、オーストリアワインに最も精通したマスター・オブ・ワインの1人。Jプレゼンスアカデミー(東京・南青山)が招へいし、大橋MWとジョイントの「オーストリア・マスタークラス」を開いた。テイスティングは3月3日、東京・麻布のディヴァン・クロのテイスティングルームに、5000円前後までの代表的なブランド19銘柄を集めて、ブラインドで行った。
90点以上の「傑出した」ワインは、「クノール グリューナー・ヴェルトリーナー リード クロイトレス フェーダーシュピール 2013」(91.5点)、「プラーガー グリューナー・ヴェルトリーナー ヒンテル・デル・ブルグ フェーダーシュピール 2013」(91.25点)、「ブリュンデルマイヤー グリューナー・ヴェルトリーナー カンプターラー・テラッセン カンプタールDAC 2015」(90.75点)の3つだった。
 傑出したワインの詳しい評価はこちhttps://www.winereport.jp/archive/773/
 優良ワインの詳しい評価はこちhttps://www.winereport.jp/archive/774/

透明な酸とピュアな果実が和食に合わせやすい

山本昭彦「ミシュランの星を持つ焼き鳥屋の主人と話した時に、塩で焼いた焼き鳥に最も合うのは、グリューナー・ヴェルトリーナーと話していたのを今も覚えている。日本ではアルザスやドイツの陰に隠れているが、透明感のある酸とピュアな果実、スパイシーな香りは、素材でシンプルに勝負する焼き鳥はもちろん、和食全般と合わせやすい。ビオディナミの生産者が多いのも時流に合っている。スクリューキャップが多いのも好印象で、うち飲みするにも向いている。温暖な産地は品種をブレンドし、冷涼な産地は単一品種に向かうという一般的な傾向があるが、グリューナー・ヴェルトリーナーはまさに北のワイン。冷涼な気候から生まれ、ミネラリーという点でも、現在の潮流に乗っている」

デリケートでエレガンスがある

アンドレアス・ウィックホフMW「オーストリアワインにとって、日本はアジアで最も重要な市場。我々は日本市場に入る努力を進めている。ブルゴーニュを含むフランスやイタリアのワインの値段が上がる中で、価格は安定している。スマラクトとドイツのトップリースリングを比べれば安さは明白だ。今回は大半がエントリーレベルのワインだったが、バランスがよく、デリケートで、十分なエレガンスがあった。我々は、マス、サーモン、仔牛にあわせるが、刺し身、寿司、天ぷらにも合うだろう。いくつかのワインは還元的なハンドリングによって、表現力が不足していた。安全策をとって、亜硫酸の多さが気になるワインも登場している。今飲むなら、2013年が開き始めている」

日本市場に可能性はある

大橋健一MW「日本にオーストリアワインの市場は間違いなくある。例えば、アルザスやドイツと比べると、アルザスは品種が多く、安いリースリング以外は酸が低め。ドイツはラベルがわかりにくい。グリューナー・ヴェルトリーナーはどれも辛口だし、ライトで、グリーンペッパーの香りがフレッシュ感を持ちあげている。ただ、名前が発音しにくく、覚えにくいので、ブランドを覚えた方がいい。ヴァッハウはミッドの厚みがあり、カンプタールやクレムスタールよりも丸さがある。リッチで、丸くて、アルコール度数が高いと、ヴァッハウというのを、我々専門家は特定しないといけないわけだが、今回の試飲でそれも確認できた」

和洋中のいろいろな料理に使いやすい

大越基裕「グリューナー・ヴェルトリーナーは料理と合わせる時に、使い勝手がいい。世界的に料理が軽くなって、素材中心になっている。派手な味わいよりも、香りが抑制的で、味わいに塩気が出やすいワインが合わせやすい。魚介系がいい状態で入ってくれば、素材の塩気とワインの塩気を合わせるのが可能になる。酸と塩気がぶれず焦点があっているので、和洋中のいろいろなところで使いやすい。私がワイン・ディレクターを務めるレフェルヴェソンスやスガラボでも時に使うし、和食やさんで使う例も見る。スクリューキャップはコルクより還元するが、開ければどんどんよくなる。スクリューキャップに抵抗を示すお客さんも随分減ったと思いますし」
アンドレアス・ウィックホフMW

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