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クロード・ブルギニョン夫妻に土壌のなぞを聞く

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 土壌微生物学の世界的な権威であるフランスのリディア&クロード・ブルギニョン夫妻が、インポーター「ラシーヌ」の招聘で初来日し、土壌とテロワールの関係などを語った。

 クロードはフランスの国立農業研究所の研究員を経て、1980年代に土壌内の微生物の活動を計測する方法を編み出した。ヨーロッパで微生物の活動が破壊されていることを発見し、90年に夫人とともに「ラボラトリーLAMS」を設立。土壌分析や長期的な土壌管理のコンサルティングを行っている。
 調査したワイナリーは、一流どころが名を連ねる。シャンパーニュのジャック・セロス、ヴエット・エ・ソルベ、ロワールのユエ、デディエ・ダグノー、ブルゴーニュのDRC、ルフレーヴ、ボルドーのカノン・ラ・ガフリエール、ル・ピュイ、ローヌのボーカステル、イタリアのエリオ・アルターレ、チェレット、スペインのピングス、ヴェガ・シシリア、カリフォルニアのハーラン・エステート、ボニー・ドゥーンなど
 クロードに、様々な質問をした。

Q どのように土壌の分析をするのか。

A 畑を訪ねて、岩盤に穴を開ける。表層、中間層、深層の3つの層から土壌をとり、まず、携帯用の顕微鏡で微生物を観察する。これまで300~400の生産者を鑑定した。調査件数は8000件にのぼる。例えば、DRCならロマネ・コンティ以外のすべてのグランクリュに穴を開けるから。再調査する場合もある。ブルゴーニュのある日本人生産者が土壌サンプルを持ってきた。見ただけで、コート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌの違いがわかった。経験を積んだ医者は患者を見ただけで病気の見当がつくようなものだ。ただ、化学薬品漬けで生命のかけらも感じられないような畑でも、ラボできちんと分析しないとわからない。20年間も農薬を散布していると、回復には最低でも5、6年はかかる。

Q あなたがかつて「ブルゴーニュの特級畑に生息する微生物はサハラ砂漠より少ない」と語ったのは衝撃的だった。現在は改善されているのか。

A 80年代はブルゴーニュの95%の生産者が除草剤をまいていた。土はカチカチに固く、耕せなかった。ブドウの樹の根は地表から50センチにしか伸びず、横に広がっていた。農薬を使う栽培から有機に転換すると、根は毎年、20センチずつ伸びる。面白い話がある。94年か95年に、ヴォーヌ・ロマネ村でサン・ヴァンサンの祭りが行われた。馬で畑を耕作する様子を見せようとしたら、土が固くて、鋤が入らなかった。ベテランの造り手が「私たちは大きな過ちをした」と話していた。89年にビオディナミに取り組んでいたのはジャン・クロード・ラトー、エマニュエル・ジブロ、ディディエ・モンショヴェの3軒しかなかった。その後、ルフレーヴ、コント・ラフォン、DRCなどが続いたが、DRCの転換で、流れが変わった。ルロワは急激に転換を図ったので、ベト病に見舞われ、94年の収量が激減した。

Q ワインのミネラル感はどこからくるのか。サロンのディディエ・デュポン社長は「メニルのチョーク土壌に根が伸びて、ミネラル感を吸い上げる」と話していた。

A まず、ミネラル感と酸を混同してはいけない。土壌の成分とミネラル感の関係はわからないが、ミネラル感を感じるワインはある。大昔に海だった畑の記憶が与えるのかもしれない。シャンパーニュの土壌を調査しても、塩みやミネラル感を感じさせる成分は分子レベルでは見つからない。プイィ・フュメのシレックス土壌からのワインは確かにシレックスの味わいがするが、ワインにシレックスを砕いて入れるわけではない。花崗岩土壌から生まれるリースリングやミュスカデにはメタリックな味わいがあるが、その理由はわからない。

Q ジャック・セロスのアンセルムは、自根の樹の方が白亜質土壌に適していると考えて、実験的な栽培をしているが、どう思う。

A コンサルタントしたからよく知っている。自根と接木した樹を同じ区画に植えて、実験している。すぐにフィロキセラに犯されてしまうから、その効果はわからない(笑)。ルフレーヴはブルゴーニュACの畑に自根と接木したものを8列づつ植えて、実験している。自根の効果は明確だ。ブルゴーニュACが村名クラスの品質になる。口の中でふくよかな存在感があり、流れ出すような広がりを感じる。世界中の畑を自根にしたら、ワインの品質は上がる。接木の業者は職を失うだろうが。

Q シャンパーニュでクローン・セレクションで栽培する生産者が多いのはなぜか。ピエール・ペテルスはマス・セレクションをとっていることを誇りにしている。

A クローン・セレクションの方が簡単で、便利だから。クローン・セレクションで優れた株を増やすには、候補の株を植えて、そこから選んで、さらに絞り込んでと、最低でも3年はかかる。DRCのようにマス・セレクションの方がいいのは間違いない。

Q 新世界での土壌調査やコンサルタントはヨーロッパと違うのか。ナパヴァレーなどは一つの区画に様々な土壌が混じる複雑な土壌だが。

A ハーラン・エステートが新しく取得した畑の調査をした。現在の畑からは離れた場所にある。土壌に合った樹を探して欲しいという。確かに火山性土壌がベースで、多彩な土壌が混じりあっているが、分析はできる。彼らはプロの集団だから仕事は素早い。ただ、農薬を減らしたり、灌がいを止めたりするのが大切だと思う。ナパヴァレーの降水量であれば、灌がいは不要だ。仕立てる高さも低くした方がいい。

Q ルロワのように、夏になっても枝の先に伸びるツルを切らずに丸めるキャノピー・フリーの剪定をどう思うか。

A 昔は密植度が高く、1本の樹につける房の数も少なかった。ルロワのような手法は現在でも正しい。7月の後半になると、ブドウの樹の生長の必要がない。エネルギーはブドウの実に集中してほしい。上を切ると、下のほうから新たな小枝が生えてくる。それでも、ほかの生産者がルロワを真似しないのは怖いからだろう。

 大量の経験と一流生産者との交流から得た夫妻の知識は、示唆に富む内容だった。

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