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「記録破り」という言葉はあまり使いたくないが、2025年のシュヴァル・ブランには使ってもいいだろう。これまでにない暑くて乾燥した気候だったが、リッチかつエレガントなワインが生まれた。
数字を見るだけで、乾燥した暑い夏だったことがわかる。6月と7月、そして8月19日までの3か月弱で降った雨がわずか40ミリ。年間を通しての降雨量は670ミリでボルドーの平均をわずかに下回った。砂利土壌は水不足に敏感だ。収穫時に落葉を制限して、残されたブドウが適正に熟すように工夫した。
年間平均気温は14.4度で、2022年や2023年より低かったものの、8月7日から17日にかけての最高気温は35度を超えて、ピークは8月11日に記録した41.6度。シュヴァル・ブランの歴史で初めてのことだった。
乾燥した暑い夏 15hl/haの低収量
若樹は乾燥した夏の水分ストレスに弱い。収量は歴史的な低さの15hl/haまで落ち込んだ。ブドウは小粒で果汁が少なくて凝縮され、アロマの表現力が高まった。古木の区画は力強さと凝縮感をもたらし、若樹はフレッシュ感と明るさをもたらした。
技術責任者でCEOのピエール・オリヴィエ・クルーエ(Pierre-Olivier Clouet)は「極端な気候に繰り返し直面して、畑の回復力を高めるためのアグロエコロジーが正しい選択だったことに自信を持った」と語る。
47区画のうち46区画をグランヴァンのためにブレンドした。セカンドのル・プティ・シュヴァル・ブランは造らなかった。グランヴァン比率は85%で、残りの15%はバルクワインで売却した。
「シャトー・シュヴァル・ブラン 2025」(Chateau Cheval Blanc 2025)はメルロー51%、カベルネ・フラン45%、カベルネ・ソーヴィニヨン4%。凝縮した果実味、豊富なタンニンはしなやかでシームレス。ヴェルベッティで、繊細な酸が生き生きした躍動感をもたらしている。ダークチェリー、カシス、ブラッドオレンジ、鉛筆の削りかす、ミントの葉、しっかりした骨格、深みと複雑さは比類がない。エキゾチックでち密なフィニッシュ。アルコール度は12.7%。重さはない。グラスを差し出す手が止まらないグランヴァン。99点。
フレッシュ感のカギはアグロエコロジーだけでなく、熟成にフードルを導入したせいもあるだろう。アンジェリュスやヴァランドローなど、カベルネ・フランやメルローを熟成させるほかの右岸のトップシャトーでもフードルを取り入れている。
2025と過去のヴィンテージの比較をたずねると、2000や1961が候補に上がった。偉大な1961は3本しか残っていない。伝説的な1947は16本。亡くなったミシェル・ロランは1947年のグランクリュを比較試飲するたびに、ムートンやペトリュスを抑えて常にトップに選んだという逸話が残っている。
その話をクルーエに話すと、「私はおそらく地上で最も1947を飲んだ人間かもしれないよ。100回は超しているかな。リコルクするたびに飲んでいるから。丸くておおらか。ポートのように甘い。シュヴァル・ブランのDNAを秘めているんだ」と。
ベルナール・アルノーから厚い信頼
そんな話をしていると、電話が2回ほど鳴った。
「2分ほど申し訳ない」
彼が試飲中に席を外すのは滅多にない。
「オーナーからの電話だったんだ」と申し訳なさそうにした。
LVMHのCEOベルナール・アルノーからの電話なら仕方ない。クルーエは2023年に師匠でパートナーのピエール・リュルトンからシュヴァル・ブランのマネージング・ディレクターに任命された。アルノーはシュヴァル・ブランとイケムを成功させたリュルトンに全幅の信頼を置いてきた。その厳格な経営者は今や、クルーエを信頼して任せている。
クルーエは2004年に研修生としてシュヴァル・ブランに入社し、4年後に28歳の若さで歴史あるシャトーの技術責任者となった。セラー刷新、アグロエコロジー、アンデス山脈の土地取得、サンテミリオンの格付け脱退、白ワインの創設など、短期間で様々な革新を打ち出してきた。職人的なヴィニュロン(栽培醸造家)と思っていたが、仕事中毒人間なのだ。
「仕事を楽しんでいるかって?もちろんだよ。ワイン造りだけでなく、経営も挑戦的だ。CEOだからね」
長期的な視点とチームを引っ張る実行力。それがボルドーの経営者には必要で、彼にはそれがあったからここまでノンストップで階段を上がってきた。そんな話をしているうちに、白ワイン「ル・プティ・シュヴァル・ブラン」を試飲したくなった。自らロウキャップを砕いて抜栓してくれた。
「ル・プティ・シュヴァル・ブラン 2023」(Le Petit Cheval Blanc 2023)は黄色リンゴ、洋ナシ、ほのかに還元のたっちがありクリーミー、ネクタリン、深みと密度があり、ピラジンの青さはない。クリーンで鮮やかな酸、保存された柑橘類の華やかなアロマ。ソーヴィニヨン・ブラン73%とセミヨン27%のブレンド。粘土質、砂質、砂利質の12区画をブレンド。新樽10%のドゥミ・ミュイと大型樽で18か月間の熟成。3万4141本。94点。
白髪が増えたが、クルーエの笑顔は明るく、いつも底抜けの活力を感じさせる。
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