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カリフォルニアワインの見方に変更を迫られたのは十数年前。ワイン・インスティテュートが2013年に主催したカリフォルニア・ワイン・サミットだった。ジュリア・ハーディングや故ジェラール・バッセらトップ評論家らと一緒に産地を回って、カルトワイン寄りだったパレットを修正し、多彩なワインに視野を広げた。
大きな発見が、SFクロニクル紙のワイン担当だったジョン・ボネが出版した新著「ニュー・カリフォルニア・ワインズ」。彼のレクチャーを聴いて、新たな潮流に乗るワインを試飲した。アルノー・ロバーツ、サンディ、リトライ、マサイアソンらのワインを飲み漁るようになった。
中でも熱心に探索したのがアルノー・ロバーツ。2015年にヒールズバーグのカスタムクラッシュを訪れた。ナパの中流家庭で育った幼馴染みのコンビは新たな動きを牽引する存在だった。現地で知り合ったネイサン・ロバーツに東京で10年ぶりに再会した。
樽職人の父を持つネイサン・ロバーツと、コングスガードやケイマスでアシスタント・ワインメーカーを務めたダンカン・アルノーの2人が2001年にワイナリーを興した。シャブリ、ボジョレー、ローヌなどを飲んでいた彼らは、それらのエッセンスを表現できるワイン造りを工夫した。ボネの本が出版される前から、スティーブ・マサイアソンやテッド・レモンら同じ志の造り手と交流があった。
新樽の強い凝縮したワインが全盛だった時代に、穏やかな抽出をして古樽で熟成するデリケートなワインを造った。それはパーカリゼーションが進む前の時代のカリフォルニアへの「バック・トゥ・ルーツ」だった。ラジャ・パーやマイケル・クルーズらも同士だった。
フレッシュで食事に合うワイン
時代の変換点とマッチしたワイン造り
ロバーツの理想は「フレッシュで飲みたくなる食事に合うワイン」。だれも手をつけなかったような冷涼な産地を探して有機栽培のブドウを購入した。ワイン造りはシンプルでナチュラル。赤ワインはバスケットプレスで圧搾してステンレスタンクで全房発酵させ、使用済みの古樽で熟成した。太陽光発電し、二酸化炭素排出量の削減など持続可能性を考慮してワインを造っている。
最初は資金不足で苦労したが、酸度が高くアルコール度が低めの生き生きした味わいは、ベイエリアやニューヨークの若いソムリエたちから支持された。世代交代、気候変動に伴うワイン造りの転換、市場の需要の変化などが進む時代の転換点とマッチした。
アルノー・ロバーツの抑制されたシャルドネは、2010年代後半以降のブルゴーニュのデリケートな自然派ワインと共通点が見つかる。時代の変化が新旧世界で同時に起きていたのだ。
「アルノー・ロバーツ シャルドネ ワトソン・ランチ・ヴィンヤード ナパヴァレー 2023」(Arnot-Roberts Chardonnay Watson Ranch Vineyard Napa Valley 2023)は洋ナシ、桃、オレンジの花、すがすがしい酸、抑制されている。軽やかでしみじみとした味わいが広がる。ナパヴァレー最南端の粘土石灰質土壌から。8000円。92点。
「アルノー・ロバーツ シャルドネ トラウト・ガルチ・ヴィンヤード サンタ・クルーズ・マウンテンズ 2023」(Arnot-Roberts Chardonnay Trout Gulch Vineyard Santa Cruz Mountains 2023)は果樹園の果実、ミント、ジャスミン、濡れた石、シルキーなテクスチャー、さわやかな酸。口中でよく動く。塩気を帯びた引き締まった余韻が長い。ボルドー品種で知られる栽培の限界地点の産地から生まれた。1万2500円。93点。
「アルノー・ロバーツ シャルドネ サンフォード & ベネディクト・ヴィンヤード サンタ・リタ・ヒルズ 2023」(Arnot-Roberts Chardonnay Sanford & Benedict Vineyard Sta.Rita Hills 2023)は1971年に植えられた伝説的な畑の自根のウエンテ・クローンから。柔らかい口当たり、スイカズラ、レモンオイル、白胡椒、純粋でクリーミィ。きめ細かい酸味、程よい凝縮感があり、フレッシュなフィニッシュ。1万2500円。93点。
知られざる産地と品種を発掘
赤ワインはこれまで知名度の低かった産地で、カリフォルニアのメインストリームから外れていた品種から、興味深いワインがそろっている。
「アルノー・ロバーツ トゥルッソー ノース・コースト 2023」(Arnot-Roberts Trousseau North Coast 2023)は2009年にレイク郡ビッグ・ヴァレーの丘陵地で発見した畑から。クランベリー、ザクロ、ドライローズ、柔らかいタンニン、鮮やかな酸味、ジューシーな果実味がバランスのとれたフィニッシュへと続く。全房発酵。7500円。91点。
「アルノー・ロバーツ ガメイ・ノワール エル・ドラード 2023」(Arnot-Roberts Gamay Noir El Dorado 2023)はシエラ・フットヒルズの標高の高い花崗岩土壌から。スミレ、ラズベリー、ブルーベリー、湿った土、ジューシーなタンニン、フローラルで軽やか。スパイシーでうまみが豊か、調和している。カルボニック・マセレーションで造られた。ロバーツは最初、モルゴンのラピエールらを好んでいたが、今はエレガントなフルーリーのガメイを好むという。5800円。90点。
「アルノー・ロバーツ ピノ・ノワール フォックス・クリーク カーメル・ヴァレー 2023」(Arnot-Roberts Pinot Noir Fox Creek Carmel Valley 2023)は水はけの良い花崗岩と粘土質の土壌。 生き生きしたラズベリー、ブラッドオレンジ、バラの花弁に柔らかく包まれている。きめ細かいタンニン、彫りが深く、優美な余韻。1万3000円。92点。
「アルノー・ロバーツ ピノ・ノワール ピーター・マーティン・レイ サンタ・クルーズ・マウンテンズ 2023」(Arnot-Roberts Pinot Noir Peter Martin Ray Santa Cruz Mountains 2023)はマウント・エデン・クローンを生んだ標高600mの伝説的な農園から。100%全房発酵。フローラルで、ラベンダー、レッドチェリー、ブルーベリー、オレンジの皮、チョーク風味を帯びたしなやかなタンニン、はつらつとした酸味。芳醇でニュアンスに富んでいる。エネルギーたっぷり。1万6500円。93点。
「アルノー・ロバーツ ジンファンデル カーシェンマン・ヴィンヤード モカルミー・リヴァー 2023」(Arnot-Roberts Zinfandel Kirschenmann Vineyard Mokelumne River 2023)は砂質花崗岩ローム土壌の100年を超す自根の古樹から。ジンファンデル、カリニャン、サンソー、モンデュース・ノワールのブレンド。香り高く、ブラックラズベリー、プラム、潮の飛沫、ジューシーなタンニン、程よい凝縮度、アルコール度は13%でフレッシュ感がある。珍しいエレガントなジンファンデル。8500円。92点。
「アルノー・ロバーツ シラー クラリー・ランチ ソノマ・コースト 2023」(Arnot-Roberts Syrah Clary Ranch Sonoma Coast 2023)は冷涼な強風が吹き抜けるペタルマ・ギャップの畑。収穫は11月第1週。ダークチェリー、セージ、白胡椒、しなやかなタンニン、清涼感のある酸。繊細でうまみが豊か。スパイシーな余韻が続く。冷涼気候シラーの成功作。1万4000円。93点。
「アルノー・ロバーツ カベルネ・ソーヴィニヨン フェロム・ランチ サンタ・クルーズ・マウンテンズ 2021」(Arnot-Roberts Cabernet Sauvignon Fellom Ranch Santa Cruz Mountains 2021)は太平洋から25キロの標高670mの畑から。ダークチェリー、リコリス、クローブ、上質なタンニン、凝縮感があり、さわやかな酸と調和している。しっかりした構造、深みがあり重層的。サンタ・クルーズから産するエレガントなカベルネ。2万7000円。93点。
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