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トランプ大統領がヨーロッパ産のワインとスピリッツに課した15%の輸入関税は、ヨーロッパと米国のワイン産業の両方にネガティブな効果を与えるリスクをはらんでいる。
8月7日に発効したヨーロッパ製産品に課する15%の関税は現段階では、フランスとイタリアを含むヨーロッパの主要ワイン生産国にとって重要なワイン、シャンパーニュ、スピリッツについて例外を認めていない。フランスのワイン・スピリッツ輸出業者連盟(FEVS)はフランスとEUに対して、アルコールを15%の関税の例外とする交渉を米国と継続するよう求めている。
FEVSのプレスリリースは、関税と米ドルの下落が相まって、米国での売上高が4分の1減少して10億ユーロの損失につながると推定し、ワインとスピリッツ業界における60万人の直接的・間接的な雇用にも影響を与えると発表した。
FEVSによると、フランスのワイン・スピリッツの輸出額は2024年に2年連続で減少した。中国市場が低迷し、シャンパーニュやボルドーなど高額なワインの需要が減少したためだ。
米国はボルドーワインの最大の輸出市場で、売上高は4億ユーロを超えている。ボルドーワイン消費の減少で売り上げが低迷しているワイン商やワイナリーにトランプ関税はさらなる打撃を与える。
シャンパーニュも米国は量、金額の両方で最大の輸出市場で、2024年は2740万本が輸出された。輸出量の18%を占めている。メゾン、栽培農家、中間業者、米国の消費者まで製造チェーン全体が打撃を受けると予想されている。
米国はEUワインの最大の輸出先で、金額ベースで27%、量ベースで21%を占めている。米国のアルコール流通は生産者、流通業者、小売業者の3層構造となっている。EUのワイン業界を代表する欧州ワイン企業委員会(CEEV)は「ヨーロッパのワインは米国経済に悪影響を与えるというより、米国へ輸出されて消費される中で、流通、小売り、ホスピタリティ産業がポジティブな経済効果を受けている」とコメントしている。
一方、トランプ関税は米国のワイン産業にもネガティブな影響も与える。フランス製やオーストリア製の樽やポルトガル産コルクは、多くのワイナリーで使われている。関税はカリフォルニアを中心とするワイナリーが生産するワイン価格にはねかえる。2年連続でワイン消費量が減少しているワイン業界にさらなる課題が増える。
トランプ関税はヨーロッパと米国のワイン産業の両方にダメージを与えかねない。

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