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「空飛ぶブドウの医者」と呼ばれたオーストラリアのブドウ栽培家リチャード・スマート博士が2日、ヴィクトリア州で亡くなった。80歳だった。長年、がんと戦ってきた。
スマートは1966年にシドニー大学で農業科学の学位を取得し、ニューヨーク州コーネル大学で博士号を取得した。樹冠管理(キャノピー・マネージメント)技術に関する研究でブドウ栽培に革命をもたらした。『The Oxford Companion to Wine』のブドウ栽培の担当編集者も務めた。
1990年にヴィクトリア州に「Smart Viticultural Services」を設立し、40か国以上の300を超すワイナリーに対して、ブドウ栽培のコンサルティングを行ってきた。オーストラリアとニュージーランドでは、気候や地勢、土壌を踏まえて産地の選定にも関わり、新たな産地を開拓した。
コンサルティングでは、気候や土壌、場所に基づいた品種、台木、クローンに関する提案、樹冠管理や仕立て、灌漑についてのアドバイスを行った。ワイン産地の拡大に伴って、冬季にブドウ樹を土中に埋める中国や年2回の栽培サイクルがあるタイやミャンマーでもコンサルタントをしてきた。
新世界的な視点に立ちながら、旧世界のブドウ栽培も深く理解していた。パソコン片手に南北半球をひんぱんに移動し、「空飛ぶブドウ博士」と呼ばれた。
380以上の著書、共著書を執筆した。『Sunlight into Wine』は樹冠管理に関する世界的な参考書として知られる。ワインメーカーが脚光を浴びるワイン産業において、ブドウ栽培の重要性を広めた。2005年には英デカンター誌の「ワイン業界で最も影響力のある50人」に選出された。
この20年間は、気候変動がオーストラリアのワイン産業に及ぼす影響について研究して、多くの論文を発表してきた。品種に与える影響やピアス病、幹の病気について警鐘を鳴らしてきた。


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