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ボルドー人の造るナパワイン、フィリップ・メルカがメルカ・ワインズ引っ提げて初来日

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 ボルドー出身のカリフォルニアのトップ醸造コンサルタント、フィリップ・メルカが、自ら造るメルカ・ワインズを引っ提げて初来日した。
 メルカは過去にダラ・ヴァレ、ブライアント・ファミリー、ハンドレッド・エイカーなどのカルトワインを手掛け、現在はダナ・エステート、ロング・シャドー、ヴィンヤード29など20以上のワイナリーをコンサルティングする。2015年のプルミエ・ナパヴァレーのオークションに出品された225ロットのうち、11ロットはメルカが手掛けていた。


 ボルドーの医者の家に生まれ、ボルドー大で土壌分析を専攻、農業と醸造の修士号を習得した。1991年からペトリュスのクリスチャン・ムエックスがナパヴァレーで展開するドミナスに雇われ、ナパヴァレーに来た。ムエックスと親しいポール・ドレイパーのリッジで収穫を手伝った際、妻となるシェリーと知り合った。
 「クリスチャンの指示で、土壌分析の仕事をした。カリフォルニアワインは力強いだけで、テロワールがないと思っていたが、複雑な土壌があり、興味をひかれた。最初にナパの土壌と恋に落ち、次にシェリーと恋に落ちたのさ(笑)。ナパヴァレーが活況を呈していた時期で、フィロキセラにかかった樹の植え替えやクローンの選別など色々な仕事があった。ブレンドや試飲を重ねる中で、ナパの多様性を理解した」
 96年にボルドー大卒のシェリーをCEOに、メルカ・ワインズを創設した。夫婦とブランド・マネジャーの3人で醸造からマーケティングまでこなす。年産3500ケース。4つのブランドを展開する。ソノマ郡ナイツ・ヴァレーの自社畑からプロプライエタリー・ブレンドの赤と白を造る「メケラ」、ナパヴァレー・セントヘレナのジャンピング・ゴート・ヴィンヤードから造る赤の単一畑「メティス」、ナパ各地のカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドする「CJ」、パソ・ロブレスのパデレフスキー・ヴィンヤードのシラーから造る「マジェスティック」。


 「メケラ プロプライエタリー・ホワイト ラ・メケラ・ヴィンヤード ソノマ・カウンティ・ナイツ・ヴァレー 2013」はマンダリンオレンジ、メロンなどのトロピカルフルーツ、オイリーなテクスチャー、横に広がるヴォリューム感があるが、重さはなく、15.2%のアルコール度を感じさせない。筋肉増強したパヴィヨン・ブラン・デュ・マルゴーの趣。ソーヴィニヨン・ブラン97%とミュスカデル3%。
 「メケラ プロプライエタリー・レッド ラ・メケラ・ヴィンヤード ソノマ・カウンティ・ナイツ・ヴァレー 2012」はブラックベリー、黒煙、かめるようなタンニンと透明な酸があり、ミネラルたっぷりのフィニッシュ。カベルネ・フラン51%、メルロ49%。シュヴァル・ブランやラフルールにブレンド比率が近い。ナパヴァレーで珍しい右岸スタイルの赤ワイン。
 メケラの畑は標高760メートル。ピーター・マイケル・ワイナリーのシャルドネの畑を見下ろす位置にある。ウェブサイトを眺めているうちに土地を見つけ、2001年に購入して、植え付けた。斜度はゆるやかだが、水を探すのに苦労したという。
 「白は22か月間、300リットルのフレンチ新樽で熟成する。ライト・トーストで、重さを避けている。一般的な火山性でなく、粘土土壌なので興味深い。これほど標高の高い畑でメルロとカベルネ・フランを栽培する例はないだろう。メルロをナパで売るのは難しい。カベルネ・フランは私の大学の研究テーマだった。育てるのが難しく、タンニン処理も難しい。正確な醸造をしないと、青く、攻撃的になる」
 「マジェスティック シラー パデレフスキー・ヴィンヤード パソ・ロブレス 2012」はシラー100%。ブラックエチェリー、地中海のハーブ、スパイシーで、ミネラル主体。タイトで、引き締まった北部ローヌ的スタイル。パソ・ロブレスのローヌ品種の可能性を示す。石灰岩が広がるPHの高い畑から。15%の全房発酵がフレッシュ感をもたらしている。UCデイヴィスで学んだジェラール・シャーヴからインスピレーションを受けた。
 「CJ カベルネ・ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2013」は娘クロエと息子ジェレミーの頭文字から名付けた入門編。柔らかくて、近づきやすい。2013はトップヴィンテージらしい凝縮感がある。最もわかりやすいナパ・カベルネのスタイル。カベルネ・ソーヴィニヨン81%、カベルネ・フラン9%、メルロ7%、プティ・ヴェルド3%。
 「メティス ジャンピング・ゴート・ヴィンヤード ナパヴァレー 2012」はセント・ヘレナ西側の、デヴィッド・エイブリューが1999年に植えた畑。ブラックベリー、砕いた石、ミント、なめらかなタンニンと強烈な果実味があり、しっかりと酸がある。焦点のあったフィニッシュと長い余韻。カベルネ・ソーヴィニヨン62%、メルロ27%、プティ・ヴェルド11%。
 「メティス プロプライエタリー・レッド ナパヴァレー 2006」はしっかりした骨組みと素晴らしいバランスに支えられた継ぎ目のないワイン。最新ヴィンテージの正確さに欠けるが、腐葉土、コーヒー、なめし革のうっとりする香りがある。20年以上の熟成が期待できる。カベルネ・ソーヴィニヨン83%、メルロ13%、プティ・ヴェルド4%。
 「ジャンビング・ゴートの畑はナパ川の古い沖積土壌があり、私の修業したオー・ブリオンを連想させる。干ばつと高温に強いプティ・ヴェルドのブレンドを増やしている。温暖化の進むボルドーでも増えている」


 ボルドー大で地質学を学んだフランス人だけに、グローバルな観点でワイン造りに取り組んでいる。
 「ボルドーの土壌は明確にわかっているから、コンサルタントの助けはいらいない。カリフォルニアは私の活躍できる余地がある。ナパヴァレーは土壌だけでなく、標高、斜面の向き、気候の多様性があり、面白い」
 
2016年5月17日 東京・東銀座で

メルカ・ワインズ メケラ プロプライエタリー・ホワイト ラ・メケラ・ヴィンヤード ソノマ・カウンティ・ナイツ・ヴァレー 2013
92点
上代:3万円
メルカ・ワインズ メケラ プロプライエタリー・レッド ラ・メケラ・ヴィンヤード ソノマ・カウンティ・ナイツ・ヴァレー 2012
95点
上代:3万4000円
メルカ・ワインズ マジェスティック シラー パデレフスキー・ヴィンヤード パソ・ロブレス 2012
94点
上代:2万円
メルカ・ワインズ CJ カベルネ・ソーヴィニヨン ナパヴァレー 2013
93点
上代:1万3000円
メルカ・ワインズ メティス ジャンピング・ゴート・ヴィンヤード ナパヴァレー 2012
95点
上代:3万5000円
メルカ・ワインズ メティス プロプライエタリー・レッド ナパヴァレー 2006
96点
上代:4万8000円
輸入元:中川ワイン

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