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シャトー・ド・ラマルク、オーナーから聞くシャトー・マルゴー秘話

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 ボルドーのシャトー・オーナーは澄ましているように見えて、じっくり話すとみな情熱的だ。シャトー・ド・ラマルクのピエール・ジルー・グロマン・ブルネ・デヴリもそうだった。

 シャトーのあるラマルク村は、メドックの守護神と呼ばれる醸造コンサルタントのボワスノ家のラボラトリーがある。家族付き合いをしていたピエール・ジルーから、シャトー・マルゴーの秘話を聞いた。ボワスノ家はオー・ブリオンを除く4つの1級シャトーのコンサルタント。亡きジャック・ボワスノは、現代ボルドーの父エミール・ペイノー教授の下で学び、ボルドー大卒業後の1977年から2人でコンビを組み、ワインの分析を担当した。ペイノーが引退後、2005年からは息子のエリックと組んで、コンサルタントを務めた。2014年にジャックが亡くなってから、エリックが引き継いだ。

 初めて聞いた秘話とはー控えめで研究者肌のジャックが1977年、シャトー・マルゴーを買おうとしたのだという。シャトーを所有していたネゴシアンのジネステは資金不足で、売却を考えた。70年代初頭の暴落によって、ボルドーの生産者は苦境に陥り、マルゴーの品質も低下した。今ならすぐに買い手がつくだろうが、数か月間も市場で売りに出ていた。「ボワスノは50のシャトーから100万フランずつ集めようとしたが失敗した」という。結局、ギリシャのメンツェロプーロス家が購入した。価格は7200万フランと言われる。
 その後、コリーヌ・メンツェロプーロスがポール・ポンタリエを雇って、栄光を取り戻したのは周知の通り。ポンタリエを推薦したのはボワスノとコンビを組んでいたペイノー教授。ボワスノの買収が成功していたら、シャトーは違う道を歩んだだろう。そうなると1級シャトーのコンサルタントも違っていた。興味深い歴史の「IF」である。ピエール・ジルーは、コリーヌ・メンツェロプーロスとも親しく、シャトーの事情に明るい。ポンタリエが骨肉腫とわかったのは2015年9月。突然だった。道理で4月に会った時は元気だった。ポンタリエの後継を決めるにはまだ時間がかかりそうという。

 そんな話を聴きながら、ド・ラマルクを垂直で楽しんだ。シャトーはD2からラマルク村のジロンド方向に入った場所にある。マルゴーの北にあるメドック中央部らしく、砂利と粘土が入り混じる土壌だ。ブレンド比率はカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロが各45%、プティ・ヴェルドが10%。1967、1979、1983、1996、2003、2010をダブルマグナムやインペリアルで飲んだ。
 1996以降の安定感が際立っていた。2005まではカベルネ・フランを20%も入れていたため、ややバランスを欠いている。1996は黒スグリ、杉、コーヒー、しっかりと抽出され、コンパクトにまとまっている。大容量瓶のせいもあるが、20年たって飲みごろ。2003はタンニン量が多いが、テクスチャーはなめらかで、フレッシュ感も残っている。森の下草の香り。2010はコアに黒みが残り、タンニンはきめ細かく、みっしり詰まっている。洗練されていて、バランスがとれている。ヴィンテージの偉大さを物語る。
 手ごろな価格で楽しめるデイリーワインだが、熟成力も備えている。

2016年5月27日 東京・代官山のレストラン「プティ・ブドン」で

シャトー・ド・ラマルク 1996 ダブルマグナム
86点
シャトー・ド・ラマルク 2003 ダブルマグナム
87点
シャトー・ド・ラマルク 2010 インペリアル
89点
参考小売価格:5616円
輸入元:ミリオン商事

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