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果実とタンニンが織り成す、ロゼ・シャンパーニュの熟成の面白さ

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 日本人は小さな畑で苦労する造り手を好む。ブルゴーニュのドメーヌが典型的だ。シャンパーニュはそう簡単ではない。畑が広い方が、完成度の高いワインが造れる。グローワー(レコルタン・マニピュラン)にもいいものはあるが、単一品種、単一畑、単一年で成果を出している造り手は一握りだ。飲み手も熟成させる必要があり、おいしく飲むには工夫を迫られる。

 最大のメゾン、モエ・エ・シャンドンの強みは、豊かなリソースにある。自社畑と契約畑を含めて、5000ヘクタールの畑にアクセスできる。シャンパーニュの栽培面積の7分の1に当たる。単なる広さではなく、畑の多様性がアッサンブラージュに役立つ。とりわけ、赤ワインが決め手となるロゼで威力を発揮する。グラン・ヴィンテージ・ロゼにはアイやブジー、ディジーなど、最良の畑から低収量で摘んだピノ・ノワールを使う。潜在アルコール度は11-11.5%に達するという。

 「グラン・ヴィンテージ・ロゼ 2008」を醸造最高責任者のブノワ・ゴエスと試飲する機会に恵まれた。2008年はシャルドネのフレッシュ感あふれるヴィンテージ。バラの花びら、砕いたストロベリー、ミント、みずみずしい果実とシルキーなテクスチャー、驚くべきバランスがあり、軽やかな果実の香りがいつまでも口中にまとわりつく。2008はコート・ド・ボーヌで、シャルドネを早く摘みすぎた反省があるという。ピノ・ノワール46%、シャルドネ32%、ピノ・ムニエ22%。ドザージュはリットル当たり5グラムでまとまっている。

 「グラン・ヴィンテージ・ロゼ 2006」は、2008との違いが明らかだった。ストラクチャーがしっかりしていて、フェノリックな要素がフィニッシュで主張する。ドライ・エクストラクトの多い2006の方が長期熟成タイプだ。「ヴィンテージのシャンパーニュ造りには決まった正解がない。ロゼはフルーティーさとタンニンのストラクチャーの両面を備える。アロマは早くから開く反面、タンニンがあるからワインとしての熟成はゆるやか」とブノワ。
 両ヴィンテージに加えて、「グラン・ヴィンテージ・ロゼ・コレクション 1988」マグナムで、ロゼの奥深さを実感した。1988は酸の強い年。硬いミネラル感がベースにあり、味わいは若々しいが、ピノ・ノワールの熟成香が広がる。硬質な酸が主張するのに、赤ワインを連想させる腐葉土やタバコの香りは練れている。香味が絡まって複雑に発展するロゼ・シャンパーニュの真髄を見た。
 ロゼ・シャンパーニュは人気上昇中だ。2015年の全体出荷量の9.4%を占める。モエは20%近い。やはり畑の広さに支えられているのだ。モエの地下カーヴ通路を歩けば、古いヴィンテージが大量に眠っていて、歴史の長さを思い知る。それでも、熟成したロゼは少ないという。


 「20年前、ロゼは人気がなかったから。もっと勉強しないと。私はロゼ・シャンパーニュの熟成を完全に解明できていない」
 巨大メゾンの主ですらこうだ。ロゼ・シャンパーニュは奥が深い。

 和の食材を使ったラペの料理は、鮎のフリット、金目鯛の鱗焼きなど、いつも精度が高い。
 
2016年6月21日 東京・日本橋のフレンチ「ラペ」で

モエ・エ・シャンドン グラン・ヴィンテージ・ロゼ 2008
93点
希望小売価格:1万150円
モエ・エ・シャンドン グラン・ヴィンテージ・ロゼ 2006
92点
モエ・エ・シャンドン グラン・ヴィンテージ・ロゼ・コレクション 1988
94点
価格:7000円 
輸入元:MHD モエヘネシー・ディアジオ

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