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フランス語と英語の二刀流、細川聖香さんがフランスの「ルイナール・ソムリエ・チャレンジ」で優勝

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 シャンパーニュのメゾン・ルイナールが22日にフランスで開いた「ルイナール・ソムリエ・チャレンジ」で、パリのエッフェル塔にある1つ星レストラン「ル・ジュール・ヴェルヌ」(Le Jules Verne)勤務のソムリエール、細川聖香さんが優勝した。英語とフランス語の両方が求められる本場のコンペティションで、日本人が栄冠をつかんだのは、グローバルに活躍できる才能の登場を示している。


世界コンクール出場者も過去に優勝


 ルイナルール・ソムリエ・チャレンジは、2010年にルイナールが始めた。世界の有能なソムリエを発見し、教育やサービスをプロモーションする狙い。米国で始まり、英国や日本でも開かれてきた。2018年のフランス大会では、世界最優秀ソムリエコンクール2019で7位に入ったルーマニアのジュリア・スカヴォが優勝したレベルの高いコンペティションだ。


 今回は、スパークリングワイン4銘柄を40分間でブラインド・テイスティングし、最初の2つはフランス語、残る2つは英語で筆記でコメントした。これは世界のビジターがシャンパーニュに訪れることを想定している。高い語学能力と経験、分析力が要求される。

 

 4銘柄はすべてシャンパーニュ。ギボラのブラン・ド・ブラン「Le Mont-Aigu 2013」、ジョセフ・ペリエのブラン・ド・ノワール「La cote a bras 2008」、ヴィルマールの「Grand cellier d'or 2015」、ブノワ・デウのムニエ100%の「Rue des noyers 2015」だった。この品種ブレンドの違いを分析するのはかなり難しい。


 細川さんは名古屋出身。2003年に名古屋マリオットアソシアホテルに就職し、2008年にソムリエ資格を取得。2010年に渡仏し、2012年からパリで暮らしている。


 「ワインを深く知りたいと思い、休暇をとった1週間の旅行で、ボルドー、シャンパーニュ、ロワールを訪問して、造り手さんの熱意と樽から飲んだワインの美味しさ、地方料理とのマリアージュの絶妙なバランス、サービスするソムリエのセンスに心を打たれ、こんな世界があるのかと感動しました。帰りの飛行機の中で『ここに住み、生産地を訪問し、ソムリエとして働きたい』と心を決めました」


 「ル・グラン・ヴェフール」で研修し、フランス語のブラインド・テイスティングを学んだ。ソムリエの国家資格を取得後、トゥール・ダルジャンやアリアンスで経験を積んで、パラスホテルでも働いた。


 「最初はワインを説明し、お勧めして売ることの難しさ、充実感を学び、お客様を満足させるコメントを考え始めました。パラスホテルではパリジャンの高い要望に対応できるように、話し方、サービス方法、行き届いたサービスを心がけるようになりました。外国人という見た目で辛い思いをすることもありましたが、満足してくださったお客様からの温かいコメントに助けられる日々でした」


メンターは職場のフランス最優秀ソムリエ


 2019年夏から、フレデリック・アントン傘下のジュール・ヴェルヌで働いている。観光客が多い1つ星で、英語とフランス語がほぼ半々のサービスをこなし、部下を抱えながら、各種コンクールに挑戦を続けている。メンターのヘッドソムリエは2010年のフランス最優秀ソムリエのバンジャマン・ロフェ。職場で定期的にブラインド・テイスティングの指導を受けて、フランス語のコメントに磨きをかけている。


 昨年の全日本最優秀ソムリエコンクールには、2月の予選と8月の本戦のために2度も一時帰国。2週間の隔離期間がある厳しい制約条件の下で挑戦し、23人のクォーターファイナリストに入った。


 「全日本の本選での経験が勉強になりました。それ以降、コメントのスタイルや分析をし、対策をたてて勉強できたことが、今回の結果だと思っています。フランス人のソムリエに勝てたのは、本当にありがたくうれしい。今でも信じられないくらいですが、少しだけ自信が持てました。来年5月、フランスでコンクールに参加する予定です。次回の全日本までに、日本のソムリエの方々に負けないように、前回のリベンジが出来るように、日々向上していきたいと思います」


海外で認められるソムリエの活躍


 海外で力を認められたソムリエは、ボルドーの2つ星「コルディアン・バージュ」でシェフソムリエを務めた石塚秀哉さんや、エノテカ・ピンキオーリのオーナー、ジョルジョ・ピンキオーリの右腕だった黒田敬介さんらがいる。2人とも日本のソムリエコンクールに出場していなくても、産地ではだれもが知る優秀なソムリエだ。


 ヨーロッパで活躍するサッカー選手たちは、ワールドカップの際は、母国の代表として活躍する。同様に海外で活躍するソムリエが世界最優秀ソムリエコンクールで日本代表となる日も来るかもしれない。世界最優秀ソムリエコンクールに出場する日本人選手の課題は語学だと、何度か田崎真也・日本ソムリエ協会会長に聞かされた。グローバル化の進むレストラン業界で、本場フランスのコンクールで優勝するソムリエの登場は、新たなロールモデルの誕生を告げている。

エッフェル塔内のレストラン「ル・ジュール・ヴェルヌ」が職場
職場の仲間と。中央がバンジャマン・ロフェ

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