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1990のアラン・ロベールとルロワ、四半世紀の熟成に喜びと後悔

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 飲んだ後に喜びと後悔が入り混じるワインがある。アラン・ロベールのシャンパーニュはその代表だ。最後に買ったのが2011年。これで残るは、1980年代のマグナム数ヴィンテージだけになった。

 開けたのは、手持ちでは最後のスタンダード瓶だったレゼルヴ 1990。開けたては鋭い酸がたっていたため、5年間のセラー保管による劣化を疑ったが、白ワイン用グラスで空気にふれて、すぐにまろやかさを取り戻した。古典的なシャンパーニュだ。クリュッグほど酸化のニュアンスは強くなく、クリスタルほど還元的でもない。塩梅がちょうどよく、木質は感じさせない。

 進化の余地を残す黄金がかった黄色。感動的に細かな泡が、連続的に立ち上がり、真珠のように連なる。パンデピス、炒ったヘーゼルナッツ、白トリュフ、モカ。熟成したコルトン・シャルルマーニュに近い深いコクと、奥行きがある。クリーミィなテクスチャーはバターのようだが、フレッシュな酸に支えられたスケールの大きさは、飲み進むにつれて大きくなった。余韻は、飲んだ後に数分間は話をしたくないほど長い。この様子では、レゼルヴのマグナムはまだ早いかもしれない。

 四半世紀の熟成をしたシャンパーニュの後に、持ってこられる赤ワインはそう多くない。こちらも残り少ないドメーヌ・ルロワの1990。サヴィニ・レ・ボーヌ・レ・ナルバントンを開けた。現行ヴィンテージは13万円だから、2009年に200ドルで買えたのは幸運だった。

 赤みと明るさを残すルビー色。予想よりはるかに若々しい。プラムのコンフィ、オレンジの皮、シナモン。層を成す果実の複雑さに圧倒される。サヴィニ・レ・ボーヌらしくチャーミング。スケールは大きくないが、強烈なグリップがあって、わしづかみにされる。余韻にスターアニスのほのかな香りが残り、こちらも飲みこんだ後は無言にさせるワインだ。ドメーヌを興して3年目。ビオディナミは完成していないと思われるが、ルロワの1990はいつ飲んでもすきがない。ただし、サヴィニ・レ・ボーヌの枠を打ち破るものではない。そこがテロワール主義者のラルー・ビーズ・ルロワらしい。

 DRCがビートルズだとすれば、マダム・ルロワはボブ・ディランだ。終わりなき進化の旅を続けている。

2016年1月7日 東京・青山の「ポルトゥス」で
アラン・ロベール シャンパーニュ レゼルヴ 1990
97点
購入:銀座屋で1万2000円(2011年)
ドメーヌ・ルロワ サヴィニ・レ・ボーヌ・レ・ナルバントン 1990
93点
購入:米西海岸のショップで 200ドル(2009年)

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