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コート・デュ・ローヌ天国、ヴァシュロンの遺品

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 ローヌの赤ワインは時に飲みたくなる。ブルゴーニュやカリフォルニアのピノ・ノワールは、仕事で飲むことが多い。気ままな夜に、わざわざ開けようという気にならない。

 神経が覚醒するからだ。国内のトップソムリエと話していると、休日にブルゴーニュは飲みたくないという。疲れるから。その気持ちはわかる。私も同じ。造りやヴィンテージをつい考えてしまう。下手すると、本を開いて畑の位置を確認したりする。となると、もう止まらない。次々と、違う本を開いて、評論家の意見が違う理由を探ったりする。酔っていい気分になるどころではない。

 気分を変えるとなると、第一候補はイタリア。料理にオリーブオイルが必要だが。ホッとする。その次がローヌだ。軽い気持ちで、お手ごろ価格を開けるとなると、手持ちがたくさんある。

 深く考えずに、ドメーヌ・デュ・クロ・デュ・カイユのコート・デュ・ローヌを開けた。ブーケ・ド・ガリーグという2000年のキュヴェ。グルナッシュ主体で、シラーがブレンドされている。スーパーライプ。これはもう、コート・デュ・ローヌの水準をはるかに超えている。赤みを残したガーネット。これで十数年熟成とは。飲み頃はさらに5年先だろう。

 甘みを残した果実がボンときて、その後にしなやかなタンニンが広がる。黒コショー、シナモンの香り。名前通り、地中海のハーヴの香りが吹き抜ける。残糖が明確にあり、それがヴォリューム感と舌触りの良さにつながっている。廊下に置いてあったのを開けたので、温度はかなり低かったが、かえってよかった。酸は低い。高めの温度で飲むと、カリフォルニア・パソロブレスの暑きローヌ・レンジャーになっていただろう。後半からはタバコ、なめし革の香りが立ち上がり、少し含まれていたブレットと入り混じり、なまめかしくも複雑な香りに発展した。

 ジャン・ドニ・バシュロンが事故で2002年に亡くなり、その後は未亡人のシルヴィが引き継いでいる。2000年はジャン・ドニが張り切って造ったヴィンテージだ。2003年からはビオディナミを導入し、2010年には認証を受けている。

 コート・デュ・ローヌの良さは、いい意味でのゆるさだ。ローヌを回ると、ランチは地元のカフェかビストロしかない。ブルゴーニュのようにマクドナルドはないから。昼から重い煮込みを食う際に合わせるのは気楽なコート・デュ・ローヌ。地酒として、ユルユルと飲むと、暑い土地でちょうどいい。

 このワインはそこまでカジュアルではない。ガッツが入っているが、熟成をへて、いい感じに落ち着いている。これで20ドルなら文句のつけようがない。ローヌは天国だ。暑すぎなければ。

(2014年3月 自宅で)
ドメーヌ・デュ・クロ・デュ・カイユ コート・デュ・ローヌ ブーケ・ド・ガリーグ 2000
週に一度は飲みたい度:90点
購入:米西海岸のショップ 20ドル

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