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ガッツのあるピゾーニのエステート・ピノ・ノワール

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 ピノ・ノワールは香りのワインだが、テクスチュアのワインでもある。

 2月にブルゴーニュに行った際に、多くの若い造り手がテクスチュアの重要性を強調していた。香りが出るのは当たり前。テクスチュアのなめらかさ、柔らかさは、タンニンと果実をきれいに抽出しないと得られない。エレガントなワインを目指す現在の潮流を示していると思った。

 テクスチュアの点から言えば、カリフォルニアにも素晴らしいピノ・ノワールはある。最近では、ピゾーニのピノ・ノワール・エステート。タンニンは溶け込んで、シルキーな口当たり。果実と酸のバランスもよく、ジューシー。ワインというより、ブドウジュースを飲んでいるようなみずみずしさがあった。

 ブラックベリー、森の下草の香り。うまみに通じるリッチさもある。アルコール度は14・7%もある。ワインだけで飲むと高すぎるのだが、イタリアンと合わせれば気にならない。全体のまとまりがとれているから。ピゾーニは自社畑のルチアがお買い得だが、さすがにフラッグシップのピゾーニ・エステートは貫禄がある。丘陵の上の涼しい畑から。一般にピゾーニ・ピゾーニと言われている。

 モントレー郡のサンタ・ルチア・ハイランズに世界の注目を集めさせたゲイリー・ピゾーニ。醸造は次男のジェフが手がけている。父のゲイリー・ピゾーニはいつもアロハシャツでロックンローラーのようなカーリーヘア。「空港でしばしばドラッグディーラーと間違われる(笑)。友達みたいな親子だよ」とジェフは笑っていた。

 タンタラ、ポール・ラトーら多くの生産者がピゾーニからブドウを購入している。ジェフは「希望者にはワインを持ってきてもらい、飲んで判断する」と話していた。ハードルが高そうだ。

 今となっては、サンタ・ルチア・ハイランズより涼しい産地が出てきている。サンタ・バーバラのサンタ・リタ・ヒルズやメンドシーノのアンダーソン・ヴァレーからは、13%前後の優れたピノ・ノワールが生まれている。ただ、このガッツのこもったピノ・ノワールを飲むと、ピゾーニの姿が思い浮かび、そのたびに元気が出る。

 実はこの日は、コングスガードのシャルドネ、ザ・ジャッジのデビュー年2002を飲むという別の目的もあった。貴重なボトル。ピークはすぎていたが、オイリーで、古いモンラッシェにアルコールを添加したような味わいだった。

 ラ・コッコラの気合の入った怒涛の料理とも協調した。

(2014年2月 東京・外苑前のイタリアン「ラ・コッコラ」で)
ピゾーニ エステート・ピノ・ノワール 2004
購入:米西海岸のショップ 75ドル
年に一度は飲みたい度:95点

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