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「ラフィット1787」ジェフーソンボトルの発見者、ハーディ・ローデンストックが死去

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 真贋論争がワイン界を騒がせた「ラフィット1787」トマス・ジェフーソンボトルを”発掘”したドイツのワイン収集家ハーディ・ローデンストックが、5月19日に亡くなっていたことが、「南ドイツ新聞」(Suddeutsche Zeitung)の報道で明らかになった。76歳だった。
 ローデンストックは音楽産業で成功し、1980年台後半に、古酒のコレクターとしてワイン業界に登場した。彼の名を世界的に有名にしたのは、1985年にパリの古い邸宅の地下セラーの壁から見つけたとされる18世紀のワインだった。シャトー・ディケムの1784と1787、シャトー・ラフィット、シャトー・マルゴー、シャトー・ブラーヌ・ムートン(後のムートン・ロートシルト)の1787などを発見したと、NYタイムズなどの取材に対して語った。
 最も注目されたのが、ワイン愛好家だった第3代米国大統領トマス・ジェファーソンが注文した「Th. J」のイニシャルが掘られたラフィット1787の手吹きボトル。同年12月、マイケル・ブロードベントMWが鑑定してクリスティーズのオークションに出品された。米フォーブス誌発行人だった故マルコム・フォーブスが10万5000ポンド(当時のレートで3200万円)で落札し、世界で最も高価なワインとして話題を呼んだ。
 ただ、ローデンストックは発掘の詳細を明らかにせず、プロヴェナンス(来歴)を、疑問視する声もあった。米国の億万長者ウィリアム・クックは、購入した1784や1787のジェファーソン・ボトルの真贋鑑定のため、元FBI捜査官、鑑定家、物理学者らからなる調査チームを結成。歴史文書、瓶の組成、放射性セシウム鑑定などを行って、疑わしいことが判明、偽造ワインを販売したとして、2006年にローデンストックを訴える民事訴訟を起こした。
 ローデンストックは98年にミュンヘンで、125ヴィンテージのシャトー・ディケムの垂直試飲を行うなど、派手な試飲会で、コレクターとして注目を集めた。この試飲会には、当時の当主アレクサンドル・リュル・サリュース伯爵、ジャンシス・ロビンソンMW、ロバート・パーカー、マイケル・ブロードベントMW、アンジェロ・ガヤ、ゲオルグ・リーデルら世界的な有名人が出席した。ただ、89年と90年に行った試飲会では、1920、30年代のペトリュスのインペリアル(6リットル)にクリスチャン・ムエックスが「戦前は生産されていない」と疑問を呈した。クリスティーズのライバルであるサザビーズのセレナ・サトクリフMWもこれらのペトリュスの真贋を疑うなど、怪しい噂もついて回っていた。
 ローデンストックはジェファーソン・ボトルを発見したのは、1本の電話が始まりだったなどと語り、詳しい経緯は墓場まで持っていった。ワイン偽造犯として逮捕されたルディ・クルニアワンより30年前に起きた不審で高価なワインをめぐる事件の真相は、本人の死去で闇に消えた。ボトルをとりまくドラマは「The Billionaire’s Vinegar」(邦訳・世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情)として出版され、映画化の計画も持ち上がっている。

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