世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. 懐石にリルベールのブラン・ド・ブラン・マグナム

懐石にリルベールのブラン・ド・ブラン・マグナム

  • FREE
 懐石料理にはやはりシャンパーニュだ。

 ダシのうまみをいかし、魚の上品な脂を楽しむ料理が多いから、赤ワインの出番はなかなかない。白ワインでもいいが、シャブリやリースリングなど酸とミネラル感の輪郭がはっきりしたものでないと楽しくない。今回はリルベール・エ・フィスのブラン・ド・ブランのマグナム瓶を、虎ノ門の「と村」に持ち込んだ。

 リルベールはクラマンに本拠を置くレコルタン・マニピュラン。1907年に早くも瓶詰めしていたという歴史を持つ。98年から現在の当主ベルトラン・リルベールが継承している。初代アルフォンスの玄孫に当たる。3・5ヘクタールの畑は15区画に分かれ、クラマンが60%、シュイィが30%、オワリーが10%。

 クラマンは、コート・デ・ブラン地区ではフィネスとエレガンスの象徴だ。メニルほどミネラル感が強くなく、オジェほどフルーティーでもない。軽快なスタイルが、マゾヒィスティックなブラン・ド・ブラン好みには軽視されがちだが、なめらかな泡、ピュアな果実、強すぎないミネラル感などは、刺身や焼き魚と抜群の相性。これが樽を使った重厚なシャンパーニュではワインが勝ってしまう。ジャック・セロスでは強すぎるのだ。

 このマグナムは3つの村をブレンドし、リザーヴワインは50%以上。昨年暮れに買って、1年ほど寝かせておいた。水のようにすいすいと進んだ。6時間くらいかければ、別のフェイズに進んだのだろうが、それは1日がかりの仕事になる。一度してみたいが、せわしなさにまぎれて、早仕上げになってしまう。

 ランスの大聖堂でシャンパーニュ騎士団を10年以上前に叙任した際は、振舞われたボトルはすべてマグナムだった。夕方に始まって、翌日の2時ごろまで続く宴にはふさわしい。シャンパーニュの変化と底力もよくわかった。我々は追い越し車線の人生を送っているが、時間をかけないとわからないこともある。

 とはいえ、カウンターでマグナム瓶をグイグイ飲むのも豪快で楽しい。何かぜいたくな気分になる。と村の料理も繊細さとバランス、ハーモニーを重視しているから相性はよかった。

 蓮根もちに始まり、ぶりの湯引き、黒豆、蝦夷アワビ、サトイモなど懐かしさと切れ味の同居する料理。懐石にはユズを使っている料理が多いから、クラマンの柑橘の香りと合わないわけがない。

 クラマンのブドウを使うのは、ラルマンディエ・ベルニエ、ディアボロ・ヴァロワらがいるが、軽すぎて敬遠してきた。もっとまじめに探索してみよう。

(2013年12月 東京・虎ノ門の「と村」で)
リルベール・エ・フィス ブラン・ド・ブラン NV マグナム
購入:都内のショップで9000円
死ぬまでにもう一度飲みたい度:88点

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP