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「傑出」は過去最多の11本 ルーションの白ワインを先取り

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 南仏のルーションが、白ワインの産地として注目されている。バニュルスやミュスカ・ド・リヴザルトなどヴァン・ドゥ・ナチュレル(VDN)のイメージが強いが、有機農法が普及し、標高の高い冷涼な畑の古木から、ミネラル感あふれる白ワインが生まれている。評論家のコメントやソムリエの口コミを通じて、世界的な広がりを見せている。
 暑さからくる濃度と果実味あふれる味わい。それがラングドック・ルーションの一般的なイメージだが、最前線を走る生産者たちは、それとは対極にある。アルコール度は高すぎず、果実味ではなく抑制されたスタイルが主流を占めている。ドメーヌ・ゴビーが精神的な支柱となっている。当主ジェラール・ゴビーの薫陶を受けた若い生産者が、固有品種にこだわり、ビオディナミを駆使して、透明感のあるワインを造っている。
 ルーションの白ワインというテーマは、オーストラリアをベースに活躍するネッド・グッドウィンMWの提案から生まれた。日本で暮らすソムリエやライターには思いつかない。世界を飛び回るMWならではの視点だった。来日したネッドも参加したブラインド・テイスティングで、彼のの全体的な評点は高かった。ネッドをメンターに抱く大橋健一MWも、「これまでの試飲で最も平均点が高い」と驚いた。4人のテイスターの得点を平均した結果、「傑出した」90点以上のワインは、過去の試飲で最多の11本にのぼった。
「傑出」の11本のコメントはこちhttps://www.winereport.jp/archive/1084/

 ラングドック・ルーションは、東のニームから西のスペイン国境にまで広がる広大な産地だ。ラングドックとルーションは独立した地域だったが、政治的、経済的な理由もあって一つの地方にまとめられた。モンペリエから内陸のカルカッソンヌに広がるラングドックがフランスの文化をとどめるのに対し、ペルペニャンを中心とするルーションは南と西にピレネー山脈を抱え、カタルーニャの影響を受けている。
 ラングドックの畑の多くが海沿いに広がるのに対して、ルーションは崖の上やピレネー山脈のふもとに広がっている。フルーティな赤・白ワインや、長い歴史を持つスパークリングのブランケット・ド・リムーなど多彩なワインを産するラングドックと比べると、ルーションで近年、注目を集めているのは白ワインである。主要な白ワインのアペラシオンはコート・デ・ルーション。コート・デ・ルーション・ヴィラージュは、赤ワインしか認められていない。今回はコート・カタランヌIGPも多数を占めた。格付けよりは生産者の技量がものをいう。主な品種はグルナッシュ・ブラン、グルナッシュ・グリ、マカブー、トゥルバ、ミュスカ・プティ・グランなど。
 4人とも93点以上を与え、最高となる平均点94点を獲得したのがドメーヌ・ル・ロック・デ・ゾンジュのコート・カタラン ルーム。ドメーヌ・マタッサのマタッサ・ブランが92点でこれに続いた。知名度はまだ低いが、価格もまだ高くなっていない。品質革命が起きているルーションの白ワインを先取りしよう。

グッドウィンMWのシャープな着眼点

ネッド・グッドウィンMW
「ルーションのビオロジックな白は、ソムリエや友達同士のSNS、評論家のコメントで広がっている。赤が注目されがちだが、白は力強さとミネラル感を兼ね備える。その矛盾が面白い。ピレネー山脈の標高の高い土地に畑がある。アプリコット、干し草、畳、マジパンなどの香りと、さわやかな酸やミネラル感があり、料理とも合わせやすい。オーストラリアでは、タイ、ベトナム料理や日本料理と合わせている。リースリングはアジアの料理に合うと思われているが、酸が高いから、逆に合わせにくい。ワサビ、醤油や甘じょっぱい料理とリースリングを飲むと、苦みを感じる。ロック・デ・ゾンジュなどは、シドニーのファッショナブルなレストランで、バイ・ザ・グラスでサーブされている。ビオロジックの造り手のワインには、シェリーの風味や揮発酸も感じられるが、クリーンなワインにはコルトン・シャルルマーニュのようなエネルギーとミネラルのドライブがある。日本でもっと売るべきワイン。ソムリエが勧めてくれれば、お客も好きになるはず」

大橋健一MW
「マタッサ、スラヌやオリヴィエ・ピトン、ゴビーは、日本でも有名だが、今回は知らない造り手も多く、一方でクオリティーが高いワインが多く勉強になった。過去の試飲の中で、平均点は最も高かった。パワーとオイリーなテクスチャーがあり、摘み取りのタイミングの見極めが鍵になるであろう。収穫期を誤ると重くなる。マタッサには2006年から2009年まで、毎年収穫時期に収穫、そして醸造研修で通っていた経験がある。マタッサはフランスで最も収穫が早い生産者であったが、それでも適正収穫を待つことも多かった。少し樽を使ったワインはまるでブルゴーニュの上物のようだ。揮発酸が幾分高いワインもあったが、うまい造り手は全体に硫化物のハンドリングが精妙だ」

山本昭彦
「発見の多いテイスティングだった。ラングドックの品質向上は前から注目していたが、ルーションの白がここまで進化していたことに驚かされた。自然派の生産者が多く、時には揮発酸や酸化も気になったが、うまくバランスをとっている。全体にうまみとエキスがあり透明感あふれるワインが多かった。値段もまだ控えめで、ブルゴーニュのプルミエクリュ、グランクリュと比べればどれほどでもない。世界には未開拓の産地が山ほどあるが、ことフランスに限っては、最も探索し甲斐のある産地の一つと言っていいだろう。ルーションの情報は海外のメディアでもあまり目にしない。幅広いネットワークを誇るMWのネッドならではの着眼点だった。日本はルーションを発見すべきだ」

大越基裕
「ルーションの白ワインは、これからのワインに求められるスタイルを暗示している。ロック・デ・ゾンジュやピトンは、果実が熟れていても、アルコール度を低く抑えるというスタイルが確立できている。信じがたい。世界的な需要にも合っている。料理との合わせで大切なのは、フレーバーやアルコール度の軽さ。酸だけがエレガンスを造るのではない。酸が強いと、ストラクチャーも強くなる。酸が控えめだと、テクスチャーが柔らかくなり、柔らかい料理との相性が生まれる。今回のようなワインをレストランでオンリストしているネッドのアイデアはさすが。注目すべき産地だ」
ルーションの白をいち早く発見したネッド・グッドウィンMW

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