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運引き寄せたフリーマン夫妻、バランスの良い「アキコズ・キュヴェ」

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 ケン&アキコ・フリーマン夫妻が趣味で始めたワイン造りが仕事になったのは、様々な幸運に恵まれていたからだ。カーヴや醸造器具などの費用は、夫の勤務先の銀行からローンで借りた。夫妻のワインセンスを信じる金融業界の友人たちが、最初からメーリングリストに登録してくれた。初代ワインメーカーのエド・カーツマンとケンは、マサチューセッツ大学の同級生だった。


 何よりも助けになったのは、NYタイムズのエリック・アシモフの記事だ。創業2年めの2003年、新潮流ピノ・ノワールの一つとして、特集記事が掲載された。ロバート・パーカー好みの力強いタイプとは違う、エレガントスタイルとして、一気に知名度が上がった。ホワイトハウスで供された「涼風 シャルドネ」もそうだが、真剣さと情熱が運を引き寄せるのだろう。


 夫妻はピノ・ノワールを造りたくて、アンダーソン・ヴァレーからサンタ・バーバラまで家を探して回った。セバストポルの物件に決めたのは、朽ちかけた家が格安で、付近に好きな造り手が多く、当時のサンフランシスコの家から1時間と近かったのが理由。今は家を建てて移り住んだが、最初の8年間は通いで、仕込んだ。体制が整うまでは、コスタ・ブラウンに一部を間貸しした。「ワインを6000ケース造れる免許がついていた。この規模が中途半端で、それも売れ残った原因。今は近隣住民も、井戸の掘削や騒音などでワイナリーを嫌う。当時は神経質でなかったのもラッキーでした」とアキコさん。


 日本には3種のピノ・ノワールが輸入されている。「フリーマン ピノ・ノワール ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2014」は、自社畑のグロリア・エステートを主体に、ソーンリッジ、キーファー・ランチなどをブレンドした。ザクロ、レッドベリー、かすかにシナモン、ジューシーで、生き生きした果実が弾ける。穏やかで、よく統合されたフィニッシュはほのかに甘い。かなり飲みやすい状態に開いている。
 「フリーマン グロリア・エステート ピノ・ノワール  ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2013」は、ワイナリーに隣接する自社畑。2006年に購入した。骨格がしっかりしていて、芯の太いタンニンが特色の力強いスタイル。砕いた新鮮なレッドチェリー、ダシ汁的なうまみに満たされ、余韻にメントールのタッチ。リッチで、香り高い。これも親しみやすい状態。
 「フリーマン アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ソノマ・コースト」は2013と2014を両方試飲した。毎回、7つ程度の畑をブレンドしている。2013は引き締まっていて、多層的な香りと繊細だが力強い味わい。深みと奥行がたっぷりとある。下半身はしっかりしているが、重さはなく、うまみの強いフィニッシュ。唇に塩っぽさが残る。
 2014はしなやかなタンニンがあり、テクスチャーの柔らかさと優しさが前面に出ている。赤系果実、アニス、燻した肉の香り。複雑な味わいを備え、余韻にハーモニーがある。最良のバレルをブレンドするのは、ボルドー的な発想だが、バランスがよく、成功している。


 最後に自社の単一畑「フリーマン ピノ・ノワール ユーキ・エステート ソノマ・コースト 2014」のデビュー作をいち早く試飲。おいの名前を畑につけた。スパイシーで硬質なミネラル感、力強いアタックと凝縮された果実。ミッドの分厚さが目立ち、余韻は非常に長い。収量が低いため、リッチな仕上がりという。女性的なスタイルが多い中で、これだけは男性的。
 コンサルタントのエド・カーツマンは、収穫期とブレンド時に来るが、ワイン造りはアキコさんと若い助手の2人で行っている。カーヴの上に建てた自宅は、全面ガラスの広い窓からグロリア・エステートが見える。夜はコヨーテやピューマが現れるという。職住近接の、自然と共生する豊かな暮らしを送っている。

2016年8月21日 カリフォルニア・ソノマのフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーで

輸入元:ワイン・イン・スタイル

フリーマン ピノ・ノワール ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2014
88点 
フリーマン グロリア・エステート ピノ・ノワール  ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2013
89点
希望小売価格:9000円
フリーマン アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2013
90点
希望小売価格:1万1700円
フリーマン アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2014
90点
輸入元:ワイン・イン・スタイル

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